
統合失調症は幻覚、妄想、不安、認知機能障害など多彩な症状があらわれる病気です。10代後半~30代半ばに発病することが多く、成人では100人に1人の割合で発病するとの報告があります。不眠、聴覚過敏、焦りなどの症状が初めにあらわれることもあります。
統合失調症の原因はまだ明らかにされていませんが、いくつかの仮説が考えられています。
1. 脳のドパミン仮説
統合失調症の原因は、脳内の4つのドパミン経路の機能に障害が起こることではないかと言われています。この4つの経路のうち、感情や意思に関与する中脳辺縁系経路の障害が、幻覚や妄想の症状に深く関連していると言われています。また、記憶や学習に関与する中脳皮質経路の障害が、自発性の低下などに関連していると言われています。
2.ストレス脆弱性仮説
様々な要因が積み重なることで統合失調症を発病するのではないかと考えられている仮説です。遺伝、大きなケガ、性格や気質などによりストレスに対して脆弱性がある状態で、さらに環境やライフイベント、日常で感じるストレスが重なることにより発病するのではないかと考えられています。また、母親が妊娠中に低酸素症を伴う合併症があると発病するリスクが高くなるという説もあります。
統合失調症では主に3つの症状があらわれます。
夜眠れなくなった、周囲の音に過敏になった、そわそわして落ちつかないなどといった症状が最初に現れることがあります。このような小さな変化は自分で気づきにくいため、周囲の人が本人よりも先に異変に気づくことがあります。統合失調症の症状が活発な時期は脳内が興奮しており、脳に大きな負担がかかっています。異変に早く気づき、早く治療を始めることで脳に大きなダメージを残さずに済むのです。症状が最初に現れた年齢や病状にもよりますが、一般的には統合失調症で早く治療を始めた人のほうが、後々まで症状が残りにくいと言われています。
統合失調症かもしれないと感じたら、「こんな些細なことで相談してよいのだろうか」などと悩まずに、症状が悪化・慢性化しないうちに早めに心療内科を受診して医師に相談しましょう。当院では、統合失調症に対する適切なアドバイス、治療方針、その後の見通しなどについてご説明します。統合失調症の治療には、薬物療法と非薬物療法(精神療法、リハビリテーション)があります。薬物療法では、抗精神病薬と呼ばれる薬が使用されることが多いですが、医師が必要と判断すれば、抗うつ薬や抗不安薬を併用することがあります。非薬物療法では、統合失調症という病気の特徴や症状について患者様自身が深く理解できるようサポートする心理教育、社会復帰に向けて取り組む生活技能訓練などがあります。